ローレット技術情報
Knurling Tool Technical Informationローレットの技術情報を設計する方にも加工する方にも役立つようにまとめました。
ローレット要素
ローレット要素に関する知識のまとめです。
ローレットの機能面や仕様決定を理解するために必要な情報をまとめました。設計や開発に重要なだけでなく、ローレットの要素を理解することは加工する上でも役立ちます。
ローレットの定義
ローレットとはワークの表面にギザギザの山形状を形成し、ワークの摩擦を増やす加工です。
ローレットは主に2つのタイプに大別されます。
並行するV溝と山で構成される平目(ストレートパターン、スパイラルパターン)と四角錘によって構成されるアヤ目(ダイヤモンドパターン、クロスパターン)の2種があります。
主に円筒状のワークの外径に加工されます。
ローレットの役割
ローレットはワークの摩擦係数をコントロールするための機械要素です。
主な用途は下記に大別されます。
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操作部品のすべり止め
作業工具の握り、機械・装置のハンドル、各種コントローラーのノブなど人間が握ったり回したりする装置のすべり止めに使用されます。
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ローラー類のすべり止め
コンベアや巻き取り装置の摩擦力をコントロールするために使用されます。
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圧入部品の回転止め、抜け止め
圧入部品のオス部分にローレットを施すことで、圧入部の回転防止や抜け止めの機能を持たせます。
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モールド部品の密着性向上
樹脂部品と金属部品をモールドで固定する際に、接着性を向上させます。
ローレットツールで加工できる形状は?
ローレットは主に円筒形状のワークの外径に加工されます。 このため、ローレットは主に汎用旋盤・NC旋盤・自動盤などの旋盤系設備で加工されます。 QUICKをはじめとするローレットツールは旋盤用のツールで、平面への加工には対応していません。平面にローレット加工を施す場合は、シェーパー、エンドミル加工、プレス加工などローレットツール以外の工法を想定する必要があります。
また円錐上のワーク(テーパー形状)のローレットツールによる加工は一定の条件下であれば成立します。 ワーク端面への加工はパターンや工法が限られますが、対応できるローレットツールもあります。 球状(SR)部位には加工ができません。
ローレットが加工できる材質は?
一般的なローレットツールで加工できる材質の情報です。
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一般鋼材/炭素鋼(SS400, S45Cなど)
焼き入れなどを行わない状態(生材)であれば切削ローレット・転造ローレットで加工が可能です。
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機械構造用特殊鋼(SCM, SCrなど)
焼き入れなどを行わない状態(生材)であれば切削ローレット・転造ローレットで加工が可能ですが特に転造加工は難易度が上昇します。
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ステンレス鋼(SUS)
ステンレスの材種と加工時の材料処理によりますが、転造ローレットでは加工が難しく、大きなピッチのローレットでは加工が成立しない場合があります。切削ローレットでは転造と比べて加工性が良くなります。
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銅/真鍮
一般的には切削ローレット・転造ローレットで加工が可能な材質です。
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アルミ合金
一般的には切削ローレット・転造ローレットで加工が可能な材質です。
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樹脂
金属と異なり、ローレットツールによる塑性加工がコントロールし難い素材です。 一般的に転造ローレットツールは加工に向きません。切削ローレットツールであれば加工できる材質が多いです。
ローレットとセレーション / スプラインの違いは?
平目ローレットとセレーション・スプラインは一見すると形状が似ているため、混同されやすい機械要素です。 しかし実は全く異なる性質と機能を持っています。
ローレットは部品の摩擦をコントロールすることが主な役目の機械要素です。このため、パターンや粗さ(ピッチ) を指定することで機能をコントロールしますが、正確な山数やローレット山の角度位相などは制御しません。これに対し、セレーションやスプラインはオス/メスのパーツを勘合させて動力伝達などを行う機械要素です。
このため、山数の変動は許容できません。また他箇所との角度位相が決められている場合も多々あります。 一見すると似たような形状に見えますが、このように性質と機能が異なるものなので、セレーションやスプラインをローレットで代替することはできません。 またスパーギアなども同様にローレットで代替することはできません。
ローレットの指定方法は?
ローレットの加工指示を行う場合には加工部位とパターン、ピッチを指定する必要があります。
山田マシンツールが販売するQUICKローレットツールには下記のようなパターンとピッチがあります。 QUICKローレットツールは、国際的に広く採用されているローレット加工の主要な規格であるDIN82に準拠して製作されています。
加工パターン
RAA(別名: 平目、ストレートパターン)
ワークの回転軸に対して平行な溝と山で構成されたローレットです。部品要素としては回転方向のすべり止めの性能が高いので、回転させるノブやハンドル、圧入部品の回り止めとして良く使用されます。コンベアや搬送機構のローラー/シャフトにも加工されます。
RBL/RBR(別名:斜目、スパイラルパターン)
ワークの回転軸に対して斜行した溝と山で構成されたローレットです。 部品要素としては回転させながら圧入を行う部品や、送りローラーなどに加工されます。 特に抜け止め効果を期待して左右ねじれを組み合わせで加工するケースも多くあります。 RBL30°/RBR45°など回転軸に対するねじれ角度を併せて表記します。
RGE30°(別名:アヤ目、ダイヤモンドパターン)
ワークの回転軸に対して左右に30°斜行するV溝で構成されたローレットパターンです。 ローレット山は60°と120°の頂角をもつひし形を底辺とした四角錘になります。 回転方向だけでなく、軸方向への摩擦抵抗を発生させるので、人間が手で操作するハンドルやノブ、作業工具のグリップとして多用されます。 送りローラーなどの用途や、樹脂と金属パーツのモールドなどにも使用されます。
RGE45°(別名:アヤ目、クロスパターン)
ワークの回転軸に対して左右に45°斜行するV溝で構成されたローレットパターンです。 ローレット山は方錘になります。 機能や用途はRGE30°とほぼ同等で、ケースバイケースで使い分けされています。
ローレットピッチ
DIN82ではローレットの山と山との間の距離をミリメートル寸法で表記するピッチでローレットの粗さを規定しています。 RAAやRBR/Lなどは理解しやすいですが、RGEについては注意が必要です。 RGE30°やRGE45°の山の間の距離を径方向に計測してしまう場合がありますが、これは誤りです。 DIN82ではRGEを左右に斜行するV溝とローレット山との集合と捉えています。 ピッチはこの溝と溝、山と山の平行する距離を計測します。 またローレットは細かい寸法制御が成立しない加工要素のため、通常ピッチは0.1mm台に切り上げて表記します。
ローレットの山高さ(溝深さ)に規定はあるか?
ローレットは原則として、山断面/溝断面角度が90°となる形状を基準としています。 このためローレット山高さ(溝深さ)の上限値は1/2ピッチとなります。 たとえばP1.0のローレットの山高さは0.5mmが上限値となります。(直径値ではφ1) ただしローレットは基本的に円筒形状のワークに加工されるため、曲率の影響を受けて角度が開きます。 このためワークの直径とピッチの関係性によって実際の山高さの上限は低くなります。
ローレットはねじなどの要素と異なり、加工すべき山高さの基準がありません。 人間が触って操作する部品は、アタリを良くし、ケガを防止するために低めのローレット山で仕上げることが好まれます。 一方で圧入部品やモールド部品では密着性を確保するために尖った山を要求されることもあります。 どのようなローレット山の高さを目標とするのかは用途によって個別に設定する必要があります。
ローレットはどうやって検査できるか?
実はローレットの仕上がりを検査することは容易ではありません。 このため実用的な検査項目を図面上で指定する際には、『使用するローレットツールのパターンとピッチを指定』程度の指示に留めた方が無難です。 圧入部品などで仕上がり外径が重要となる場合は外径に公差を入れることも可能です。
ただし公差レンジが狭い場合はローレット加工単体では公差管理できない場合があります。 この場合はローレット加工後に旋削・研削を加える必要があります。 ローレットにはねじ等とは異なり、検査ゲージが存在しません。 またローレットのV溝はプローブなどの接触測定も困難なため、設計時に測定不可能な検査項目を設定してしまわないように注意が必要です。
ローレット加工方法
ローレット加工技術に関する知識のまとめです。 実際にローレットの加工を行う上で役立つ情報をまとめました。加工オペレーターの方にはもとより、設計や開発に携わる方にも有益な情報となります。
一般的なツールの選定方法
ローレット加工を行う際にどのようなフローでツールの選定を進めていくか、典型的な例を紹介します。
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ワーク材質を確認する
まず被削材が転造ローレット、切削ローレットで加工できる材質かチェックします。 金属であれば引っ張り強さ900N/mm2以下のワークが転造・切削とも加工対象となります。 また切削であればHRC32以下、転造であればHRC20以下が加工対象となる材料硬度です。 これを上回る引っ張り強さや硬度のワークは別工法を検討するか、熱処理の工程を見直すなどの検討が必要になります。
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加工設備を確認する
QUICKローレットツールには幅広いレンジのツールがあります。まずは加工を検討している設備に取り付けられるシャンクサイズを確認しておきます。 一般的にタレット型NC旋盤であれば□16~□25、スイス型自動盤であれば□8~□16のシャンクサイズとなります。シムなどを併用することで小さなシャンクサイズのツールを大きなサイズのバイトホルダに搭載することはできますが、その逆は対応できません。
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ワークの径を確認する
ローレットツール毎に加工対応できるワーク径が決まっています。 ローレットを加工する部位の径を確認しておきます。 特にアヤ目用のダブルホイールタイプのツールで対応サイズを下回る径のワークを加工すると干渉で加工が成立しなくなる可能性があります。
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指定されたローレットのパターンとピッチを確認する
ローレットには主に平目(ストレートパターン)とアヤ目(ダイヤモンドパターン、クロスパターン)、斜目(スパイラルパターン)があります。パターンの指示が明確でない場合は、設計者に確認を行ってください。 またパターンの他にローレットの粗さの指示を確認する必要があります。ローレットの粗さの指定方法は主に次の様なものが一般的に使用されてます。
ピッチ
ローレットの山と山の間の距離を表したものです。図面上の表記は「P」などの記号を用い、ミリメートル単位で表記されます。番手、TPI
インチ系の表記方法で、1インチの間に何山配列できるサイズなのかを表したものです。一般に番手(ばんて)やTPIなどと呼称されます。TPIとはTeeth Per Inchの略語です。(ティーピーアイ、ティースパーインチ)
図面上での表記方法は「T.P.I」「TPI」「番手」「#」「〇〇山」など様々なバリエーションがあります。 表記された数値を25.4で割るとミリ寸法に換算可能です。
例:#24 → 24÷25.4=0.94mmモジュール
正確な表記方法ではありませんが、ギアやスプラインの表記方法を転用したモジュールも一般的に使用されています。モジュールとは本来はピッチ円の直径を歯数で割った数値でギアなどの噛み合いを担保するための要素となります。正確にはローレットにはピッチ円が存在しませんが、便宜上は計算可能です。 図面上では「m」の記号で表記されます。 モジュールに円周率を掛けることでピッチに換算して使用します。
例:m0.3 → 0.3x3.14=0.94mmQUICKではミリメートルピッチを採用しています。番手やモジュールで指定されたローレットはピッチに変換した後、最も近しい寸法のものを選択します。
例: m0.3≒P0.94mm → P1.0を選択ワークサイズと材質によって変動しますが、一つの目安としてP1.0を超えるものは加工抵抗が大きくなるため転造ローレットよりも切削ローレットを選択した場合が良いケースが多くなります。 ツールによって対応できるピッチの範囲が異なるので、指定ピッチに対応できるツールに絞り込みを行います。 -
周辺部位の干渉を確認する
最後にローレットツールを選択する上で重要な干渉を確認します。 特に切削ローレットは干渉が大きく、下記のような形状には対応できないので注意が必要です。
- ワークの中間部のみに加工するローレット
- フランジなど段差部に近接するローレット
転造ローレットは切削よりも干渉の制約が少なくなりますが、下記のチェックが必要です。 - ローレットの加工範囲がホイール厚みを下回っていないか
- 段差部がホイール突き出し量で回避できる寸法に収まっているか
切削方式と転造方式、選定の基準は?
シチュエーションによって選定方法が変わってきますが、一般的には下記のようなフローで切削ローレットと転造ローレットの使い分けを行うと良いです。
切削ローレットで加工可能な形状か確認する
切削ローレットは加工可能な形状に制約があります。このため、まずは切削ローレットが適用できない形状でないか確認を行うことで選定作業がスムーズになります。 切削ローレットが加工できない形状には次のようなものがあります。
- シャフト/パイプの中間部のローレット
- フランジなどの段差部に対して近接するローレット
- 素材径より太い仕上がり径を求めるローレット
ワーク材質を確認する
ローレットツールで加工できるワークの硬度は原則HRC30未満となります。 切削ローレットであればHRC30未満、転造ローレットであればHRC20未満が最適な加工硬度となります。 また樹脂は転造加工が成立しないワークがほとんどなので、基本的に切削を選定します。ピッチを確認する
ローレット加工はピッチが大きいほど加工負荷が上昇します。 切削ローレットと転造ローレットとでは、切削ローレットの方が加工負荷が低くなります。 このため、どちらの工法も選択できるワーク形状でピッチが大きいものについては切削を選択した方が加工が安定します。 特にステンレスなど硬度が高い材質と大きなピッチの組み合わせでは、切削ローレットでないと加工が成立しない場合もあります。ワーク径/肉厚を確認する
ローレットは比較的加工負荷の高い加工なので、ワークの径が細く長い場合は曲がりなどの加工後トラブルが発生する可能性があります。また、薄肉のワークも同様となります。 この場合は切削ローレットを選定した方が合理的となります。重視する要素を決める
上記の4項目を確認した上で切削と転造を決定する決め手に欠ける場合は、生産を行う上で重視する項目によって選択をします。 切削と転造のどちらも選択できるシチュエーションでも、各工法には次のような特長があるため生産上で重視する項目を判断して選定します。
転造ローレットツールは種類が多く、選定方法が良くわからない
転造ローレットツールには下記のような特長があります。検討内容にマッチしたものを選定してください。
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F701シリーズ
平目(ストレート/RAA)、斜目(スパイラル/RBR,RBL)に特化したツールです。 イニシャルコストが低く、干渉が少ない点が特長です。 平目・斜目転造ローレットの第一推奨ツールです。
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F711シリーズ
アヤ目(ダイヤモンド,クロス/RGE)の他、平目・斜目も加工できる万能ツールです。アヤ目加工の第一推奨ツールです。他に少量多品種加工で、いつどのローレットを加工するか未定の場合に1本持っておくと便利なツールです。
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F712シリーズ
フランジなどの段差部干渉があるワークに対応できる低干渉ツールです。アヤ目、平目、斜目の各パターンに対応可能です。干渉回避のため、ホイールを片持支持してます。このため剛性はF711より低下します。
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F751、F761シリーズ
転造の中では加工負荷が低い方法で加工を行うツールで、転造で硬度が高めの材質を加工する場合や、大きなピッチを加工する場合に最適なツールです。 あらかじめワーク径に合わせてアームを調整しておき、転造の加工負荷が最も低くなるワーク直径上で挟み込んで転造を行います。 アヤ目、平目、斜目の各パターンに対応可能です。高性能なツールですが、調整に手間がかかるため一定以上の量産ワーク向けとなります。 F751がスイス型自動盤向け、F761がタレット型NC旋盤、汎用旋盤向けとなります。
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F791、F792シリーズ
長尺・細物のワーク加工に適したツールです。120°ピッチで配置された3点のホイールでバランス良く加工することで長尺・細物のワークでも曲がりを押さえて加工できます。 アヤ目、平目、斜目の各パターンに対応可能です。主にスイス型自動盤に搭載して使用します。 F791は高剛性タイプ、F792は低干渉タイプとなります。 正面からワークを呑み込む加工方法のため、転造ツールの中でも加工形状の制約が多く、ワーク先端から連続する形状しか加工できません。また、使用前にワーク先端に導入形状を加工しておく必要があります。調整に手間がかかるため、一定以上の量産ワークが対象となります。
[切削加工]平目ローレットが斜めに曲がってしまうトラブルに対策はあるか?
切削による平目ローレット加工は難易度が高い加工の一つです。平目ローレットが斜行してしまう場合の対策を3段階に分けて解説します。
基本設定の確認
ツールの突き出し量は適正か?
- ローレットツールがツールホルダから必要以上に突き出していると、加工負荷によるたわみが大きくなり、ローレット目の曲がりにつながります。ヘッドのジョーをツールホルダに突き当てるなど、最小限の突き出し量となるように調整してください。
ホイールは摩耗していないか?
- ホイールが摩耗していると加工抵抗が上昇し、ローレット目の曲がりにつながります。 切削ローレットはホイールのエッジで加工するため、エッジに丸みがついてしまったホイールは交換してください。
芯高は適正か?
- 切削ローレットは進み角がついており、芯高がズレているとローレットが斜行します。
ツールの芯高が適正かどうかは、次のような方法で確認可能です。
- ツールとブランクワークを設備にセットする
- MDIモード(マニュアル)で回転停止もしくは、可能な限り低速回転の設定を行う。
- 軸方向(Z軸)でホイールが全面あたりする位置にツールを移動し、径方向(X軸)へツールをゆっくりジョグ送りする。
- 切削ローレットは進み角がついており、芯高がズレているとローレットが斜行します。
ツールの芯高が適正かどうかは、次のような方法で確認可能です。
ツールパスの確認
ローレットツールで加工できるワークの硬度は原則HRC30未満となります。 切削ローレットであればHRC30未満、転造ローレットであればHRC20未満が最適な加工硬度となります。 また樹脂は転造加工が成立しないワークがほとんどなので、基本的に切削を選定します。芯高の調整
ローレットツールで加工できるワークの硬度は原則HRC30未満となります。 切削ローレットであればHRC30未満、転造ローレットであればHRC20未満が最適な加工硬度となります。 また樹脂は転造加工が成立しないワークがほとんどなので、基本的に切削を選定します。
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